2018年1月11日木曜日

青ひげ その一・下




ピノキオ」の作者カルロ・コッローディがシャルル・ペローの童話集(1695)をイタリア語訳したもの(1875)を、本邦の児童文学者楠山正雄の和訳(1950)と対置しました。意訳がされている箇所は、できるだけコッローディ版にちかくなるようになおし、語学の助けになるようにしました。








その一・下


 それから、ひと月ばかりたったのちのことでした。

 青ひげは、ある日、おくがたにむかって、これから、あるたいせつな用むきで、すくなくとも六週間しゅうかん、いなかへ旅をしてこなければならない、るすのあいだは上機嫌にしていてほしい。なかのいい女友だちをやしきに呼んでもかまわないから、といいました。ひとくちに言えば、女王のようにして、そこらじゅうでぜいたくな宴会をひらくように言ったのでした。

 「ほら、」と、そのあとで、青ひげは奥がたにいいました。「これはふたつとも、わたしのいちばん大事だいじ道具どうぐのはいっている大戸棚おおとだなのかぎだ。これはふだん使わない金銀の皿を入れた戸棚のかぎだ。これは金貨きんかと銀貨をいっぱい入れた金庫きんこのかぎだ。これは宝石ほうせき箱のかぎだ。これはへやのこらずの合いかぎだ。

 さて、ここにもうひとつ、ちいさなかぎがあるが、これは地下室ちかしつの大ろうかの、いちばんおくにある、小べやをあけるかぎだ。戸棚という戸棚、へやというへやは、どれをあけてみることも、中にはいってみることも、おまえの勝手かってだが、ただひとつ、この小べやだけは、けっしてあけてみることも、まして、はいってみることはならないぞ。これはかたく止めておく。万一にもそれにそむけば、おれはおこって、なにをするか分からないぞ。」

 奥がたは、おいいつけのとおり、かならず守りますと、やくそくしました。やがて青ひげは、奥がたにやさしくだきしめると、四輪馬車に乗って、旅だって行きました。



In capo a un mese, Barba-blu disse a sua moglie che per un affare di molta importanza era costretto a mettersi in viaggio e a restar fuori almeno sei settimane: che la pregava di stare allegra, durante la sua assenza; che invitasse le sue amiche del cuore, che le menasse in campagna, caso le avesse fatto piacere: in una parola, che trattasse da regina e tenesse dappertutto corte bandita.

"Ecco", le disse, "le chiavi delle due grandi guardarobe: ecco quella dei piatti d'oro e d'argento, che non vanno in opera tutti i giorni: ecco quella dei miei scrigni, dove tengo i sacchi delle monete: ecco quella degli astucci, dove sono le gioie e i finimenti di pietre preziose: ecco la chiave comune, che serve per aprire tutti i quartieri. Quanto poi a quest'altra chiavicina qui, è quella della stanzina, che rimane in fondo al gran corridoio del pian terreno. Padrona di aprir tutto, di andar dappertutto: ma in quanto alla piccola stanzina, vi proibisco d'entrarvi e ve lo proibisco in modo così assoluto, che se vi accadesse per disgrazia di aprirla, potete aspettarvi tutto dalla mia collera."

Ella promette che sarebbe stata attaccata agli ordini: ed egli, dopo averla abbracciata, monta in carrozza, e via per il suo viaggio.





語彙


in capo a un mesedopo un mese「一ヶ月後」という意味で、現在は使われません。

un affare di molta importanza という言い方は現在しません。di grande importanza という言い方になります。'per me ha molta importanza'というふうには言います。

caso...(~の場合には)は、現在ではそのままでは使われず、in casoといいます。

trattareはいまの使い方とは異なり、comportare(ふるまう)やsentirsi(そのように思う、感じる)という言い方になるでしょう。

corte banditaは現在では使われない表現ですが、「中世諸侯のひらく宴会」のことです。あたかもそのように豪勢にふるまうように、と言っているわけです。

コロン「:」のあとにcheという書き方は現在基本的にされません。(今日ならdisse a sua moglie,というふうに区切って、コロンのかわりにコンマを打つでしょう。)

andare in operaという言い方は現在されません。使われるということです。

guardaroba(m)の複数形が女性系になるのは古い表現でもう使われません。grandi guardarobaとなります。

gioiaは宝石のことで、gioia「喜び」とは別の言葉です。今日は普通gioielloといいます

finimentiは複数形で馬具という意味にもなりますが、美術品の装飾や、女性の装身具の意味にもなります。

quartiereということばは、現在では町の区画の意味で使われます。この場合のように部屋の意味では使われません。ナポリ方言や古語ではquartinoを小さなアパートの意味で使います。

chiavicinaは小さな鍵の意味ですが、いまではふつうにpiccola chiaveというでしょう。chiavettaという言い方もありますが、それほど使われません。chiavettaはUSBメモリ(フラッシュドライブ)の意味でよく使われます。

essere attaccata agli ordiniは言いつけをよくまもるという意味ですが、現在ではこのような言い方はしません。eseguire gli ordini alla letteraあるいはrispettare gli ordini, non trasgredire gli ordini「命令にそむかない」という言い方をします。

montare in carrozzaという言い方は現在もできますが、もちろん馬車が使われる場合は稀です。montare in moto「バイクにまたがる」といういう言い方もできますが、それほどしません。montareは動物の雄が雌と交配する意味にもなり、montaという言葉は、交尾を意味します。toro da monta種牛など。

novelloは「新しい」という一般的な意味では現在つかわれませんが、sposi novelli「新婚夫婦」やこの場合のnovella sposa 「新婦」という言い方は残っています。








( ¯෴¯ )







0 件のコメント:

コメントを投稿